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「まさか灯ちゃん、ついに男に目覚めたの? そうなってもおかしくないし、むしろその方が安心だよ。女の子じゃ灯ちゃんの貞操守れないもの。私としてはせーま君ありだなぁ。だって、灯ちゃんと並ぶとまさに受けと攻めって感じで超お似合い」
「ちょっと陸、気持ち悪いこと言わないで! 私の灯をあんたのいかがわしい創作物に巻き込むんじゃないわよっ」
キッ、とにらみ合った二人はひと時黙り込む。そして陸さんが視線を横へずらし、「あそこの妖精粉々にしようかな」と低く呟く。で、再び口喧嘩が始まり、取っ組み合いに発展する。その時、もう我慢の限界だと言わんばかりに、灯が俺の手を引っ張って立たせる。
「もういい! 姉ちゃん達の許しなんかそもそも必要ないし!」
もはや俺は透明になりかけた人間。そう思うことで事態に巻き込まれないことを願い、灯の手に従った。というか、それ以外ない。
「ちょっと灯! 部屋で二人きりなんて許しませんっ」
蒼さんの制止を灯は無視し、ずんずん廊下を進む。そしてリビングから飛び出し、追いかけてきた蒼さんにこんな言葉を叩きつけた。
「勝手に入ってきたら……、よ、夜まで口きかないからっ!」
「そんなっ!」と悲鳴を上げた蒼さんはついに黙り込み、陸さんの笑い声だけが聞こえてきた。
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