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これは正解ではないかもしれない。
でも、正解にしたい。強くなりたいと思った。
「俺、やっぱりお前と友達にはなれない」
灯は驚くべき速さで顔を上げた。その拍子に、また涙がぽろっと頬を伝う。まるで、俺に打たれたような顔だ。それでも容赦なく「絶対無理なんだ」と付け足した。
悪いな。
本当にごめん。
でもな、傷つける前に浅く傷つけた方が遙かにマシだと思うんだ。
「あ……や、やっぱり、俺……気持ち悪い、よな? 友達になったら面倒そうだし……姉ちゃん達、あんなだから」
自分を納得させるためか、灯はしきりに頷いて見せた。
「そんなこと言ってない。気持ち悪くもないし、姉さん達はその、灯のことが心配なだけだから、悪く思わない」
「……え? じゃ、じゃぁ何で? 意味、わかんない」
眉尻を下げると、灯はもう一度「わかんない」と口を尖らせた。
「俺、男と寝たことあるからそういうの、気持ち悪いって思わない。って、こと」
たっぷり沈黙を挟んでから、灯は口をあんぐりあけた。それこそ顎が外れる勢いで。叫び声すら喉の奥で引っかかって出ないって感じだった。
さすがに視線が合わせづらかったので、俺はそっと目を伏せた。
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