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 俺は自分がゲイかもしれない、とあの時まで一度も疑ったことがない。行為が気持ちいい、と思えば男が好きということになるのか? しっくりこない心を持て余し、それなりに混乱を来していた。分かっていたことは、このまま関係を続けても先は見えない、ということ。だからブレーキをかけた。  所が先輩は、「別れたら全部バラす」と俺を脅した。行為の写真も動画もある。これを俺の母親にも見せると言い出した。 「なのにさ、結局うちの親にバレたんだよ。よりにもよって、その最中を見られてさ」  家に押しかけてきた先輩を渋々受け入れて、いつものように部屋で事に及んだ。もはや作業に等しかった。早く終わらせたい。満足したら帰ってくれ。  そこへ夜勤続きの母が、まさか早退してくるとは夢にも思わなかった。 「母に初めて手を上げられたのはあの時だった。何度も何度も打たれて、しばらく物が食べられなかったくらいだ」  先輩は俺が殴られている隙に服を引っ掴んで逃げた。その情けない後ろ姿が、先輩をみた最後だった。 「それでな、その時初めて母さんに聞かされたんだよ。交通事故で亡くなったって聞かされていた父さんが、実は生きていて、家族を捨てて不倫相手と駆け落ちしたってことを。しかも相手は男」     
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