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 母があれほど取り乱し、怒り狂うのも当然だった。永遠の愛を誓いあったはずの嫁と、子供を捨てて行った男。酷い裏切りに深く傷つきながらも、母は俺を育ててきた。なのに、自分の息子が同じ裏切り方をしたのだ。よりにもよって母を一番傷つける方法で。  おかげであれから母は人が変わってしまった。俺を監視するようにもなったし、信じなくなった。常に疑いの目を向けてくる。もしくは、いつか同じ事をして自分の元からいなくなると恐れているのかもしれない。 「性癖ってさ、遺伝すると思う?」  たっぷり間をおいて、「……え?」と灯の返事がきた。 「別にさ、不幸話をお披露目したかったわけじゃないんだ。慰め合いたいわけでもない」  灯の反応がくるまで、口を結んで待った。 「お、俺も……だよ」   無視されたなかったことに勇気を得て、俺は堂々と正面を見据えた。目があったのは一瞬で、灯はすぐに俯いてしまった。 「父さんのことを聞かされてから、二度と母さんを裏切らないって決めた。男が、男とどうにかなるなんてやっぱり、おかしいことだから。でも……」  なのに。 「俺、灯が好きなんだ」
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