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 対する灯の調子もくだけ、この波に乗ることにした。  ベッドの端に膝頭をのせて、灯との距離をぐっと縮めた。すると、「う、うわぁ」と可愛い悲鳴を上げて寝ぼけ面の羊を俺の顔にぶつけてきた。そんなことには屈せず、羊を灯だと思うことにした。 「そうだな。好きだよ灯の顔、可愛いし俺好み。一目惚れなんだ」    羊に隠れて、灯の耳が真っ赤に腫れ上がっていくのを見た。反応がいちいち初々しい。 「灯の声もいい。顎が丸っこくて、小さな唇もいい。すぐ赤くなる耳も好きだ。灯より可愛い女子なんか、今まで見たことがない」 「あ、あの」「もうその辺りで」「いい、んだけど」と、灯の掠れた声に耳を澄ませる。色素の薄いふわふわした髪を見つめながら、羊の頭を撫でた。 「真智さんと話してる時の灯が好きだ」「ぼーっとしてる時もいい」「お弁当を食べている時の満足そうな顔も」「ずっと、灯を見ていたい」「灯に意識されたいんだ」 「か、勘弁してもうっ! やめてっ」  大声を上げた灯は羊を俺に投げつけ、ベッドの上を這いながら壁際へ寄った。そして芋虫のように身を丸め、「も、もうやだ」「こんなの、無理っ」とくぐもった声で訴える。     
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