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 その丸い背中をひっくり返して、無理矢理にでもキスをすれば陥落するんじゃないか。と、酷いことを考えながら、扉に足を向けた。 「友達になれなくて悪いな。でも、分かっただろ? だからさよならだ」  ◆  廊下に出ると、扉からさっと身を離す二つの影があった。蒼さんと陸さんである。  二人は慌てる素振りもなく、むしろ堂々としていた。 「やっぱりゲイじゃん~」  レンズで俺をロックオンすると、陸さんは連写を始めた。「祝カミングアウト」とか何とか言って。そして蒼さんは腕を組み、ふんと顎を反らす。 「あらかた聞かせてもらったわ」 「なら話は早いです。もう大切な弟さんには近付きませんから、安心して下さい」  お辞儀をして早々に玄関へ向かうと、なぜか二人が追いかけてきた。なんなんだ一体。  聞き返すのも面倒そうなので黙々と靴を履き、ドアノブに手を掛けた。重厚な扉を閉めようと思うが、追っ手の指を挟みそうになったので諦めた。 「なんなんですか?」    俺もそこそこ苛ついていたのでぞんざいな口調になった。 「諦めるのが早いんじゃないかしら」     どの口が言う!?   悪態を吐きたくなって、「はぁ!?」と聞き返してしまった。 「本気で灯を想うなら振り向かせてごらんなさい」  二重人格なんだろうか。天敵を追い払うほどの眼光はどこへいった?      
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