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 白井は垂れ目のくせに鋭い。 「失恋した」  そんなことをうっかり白井なんぞに零した俺は、相当参っていた。 「はっ、あ!?  宮内振るとかすげぇな! てか……、ぷぷっ」  不愉快な笑い声に顔を顰めると、「いや、悪い悪い!」と白井が掌をひらひらさせる。 「だって、本気の相手だったんだろ? なのに振られるとか不憫な奴~」  ほっておけ。と言うのも億劫で、溜息を吐いた。すると白井は事態の深刻さにハッとさせられたようで、喉を鳴らしながら「あー、まぁ、元気出せ。うん」と慰めてくれる。   「よし。俺に任せとけ。合コンのセッティングをしようじゃなか」  ◇◆◇◆◇  テストが無事に終わると、文化祭の準備に追われるようになった。  去年は呼び止められても上手いこと逃れていたが、失恋すると性格は変わるものらしい。わりと真面目に取り組んだ。と言っても、女子に命じられるまま身体を動かすだけ。  そして本日はホームセンターで大量の絵の具を買いに行かされ、学校へ戻る道中だった。勝手についてきた女子に囲まれながら歩く姿は、はべらせているように見えて微妙な気分。  それでも、他愛もない話に相槌を打ち、遊びに誘われれば誤魔化すように笑っておいた。     
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