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 次の日から灯の様子に変化があった。以前のように足しげく真智に会いに来ては、俺にも少なからず声を掛けてくれた。これまで通りでいようね、というサインか? 直接訊けない代わりに目を合わせようとするのだが、やっぱり逸らされる。  嫌われているのかいないのか、どっちだ。 「真智、明日なら蒼姉大丈夫って言ってたよ」 「わ~、ありがとう。お菓子はお母さんより蒼さんに教えてもらった方が絶対いいもん」  二人の会話が聞こえる。俺の許可なく勝手に耳が拾うせいだ。せめて、そう思われない為に四限目の授業の支度をする。まるで真面目を絵に描いたようだな、自分。などと感心しながら教科書を出し、ノートを広げる。そして必死に気を紛らわそうとしていたら、ふらふら~っと白井が来やがった。 「喜べ。お前の為に、女子高のお嬢様方と話を取りつけたぞ。次の土曜、駅前二時集合!」 「どうだすごいだろ」と胸を反らす白井の態度にイラッときた。だって、顔にこう書いてある。褒めて褒めて、と。 「何の話だ」  鬱陶しそうに聞いたら、白井は心外だと言わんばかりに顔を寄せてきた。教科書を盾にする。     
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