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俺は白井とは何もかも逆。狐のような鋭い双眸は、いついかなる時でも「機嫌悪いの?」と間違われるほどだった。シャープな頬も、薄い唇も、整いすぎた鼻梁も、俺という人間を冷たく見せるただのパーツ。隣に歩かせたら自慢できる、というあからさまな空気を醸す女子にとっての餌であった。
「全部持ってけよ」
「だから氷の王子だなんて呼ばれるんだわっ」
小指を立てて気色悪い声で責められた。
俺が眉間に皺を寄せていると、白井は誰かに呼ばれてさっさと席へ戻った。いくつかの土産を抱えて。
「静馬、廊下側の席になったのね。声かけやすくなって嬉し~」
さりげなく声を掛け、地域限定のスナック菓子を机に置かれた。開かれた窓枠に身を寄り掛けているのは、見知らぬ女子。
ホームルームでさっそく席替えを済ませ、最後列になれたのは喜ばしいが、そういう効果を与えてしまうとは、ますます厄介だ。とうのも、前の席が関係している。
「あ、真智、廊下側だ。いいなー、俺なんてど真ん中でさぁ」
ほらきた。早速きた。
夏休み中、さんざん頭を悩まされた須田灯のおでましだ。
声を耳にしただけで反応してしまう自分は、あの日からきっと呪われている。
前席のなんとか真智という女子と須田が会話を楽しんでいる。
くそ、問い詰めたい。
どうして、笑っていられる?
誰にも打ち明けられず、苦しんでいるんじゃないのか?
それなら、俺が動くべきだったのか。教師に、あんなことがあったと訴えるべきだった?
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