12

1/9
前へ
/148ページ
次へ

12

 おかげでその後の授業はお経にしか聞こえなかった。ちなみに古典。  昼休みになったら灯に直接文句を言いたい。一番重要なのは合コンに行かせないこと。全力で止めてみせる。ふざけるな。俺を振っておきながら自分に好意を寄せている男がいる場へ行くだなんて、許せない。あまりの悔しさに頭がカッカッしてきた。身体が熱い。  その男と灯がどうにかなるとは思わないが、人間のもつ想像力ってやつは厄介で、自分が一番見たくないものを見せてくれる。  机を蹴り飛ばしたい衝動を理性で何とか抑えた。代わりに、机の中でそっとスマホを操作する。 『昼休み二人で話したい。ご飯終わったら視聴覚室へ来てくれ』  ◆  待ちわびた昼休みがやってきた。灯は何食わぬ顔で真智とそのお友達に囲まれて弁当を食べている。そんな様子をチラチラと視界に入れながら、黙々と一人でマロンパンとカフェオレを胃に落としていく。あぁ、もっと甘さが欲しい。生クリームを喉へ流し込みたい気分だ。  それにしても、灯は女子の中でもなんら違和感がない。むしろ溶け込んでいて、誰よりも愛らしい花のような笑顔を披露している。それはもう大層ご機嫌が良さそうで……。     
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

386人が本棚に入れています
本棚に追加