386人が本棚に入れています
本棚に追加
「せっ、せーまの馬鹿っ」
再び罵られたが、俺はぐっと堪えて「なんで?」と優しく返した。その態度にいくらか戸惑っているのか、灯は俺との距離を気にしながら後退し、なぜかカーテンにしがみついく。
「だ、だって俺、待ってって言ったのに! 考えてるから待ってって」
そう言ったのに、と悔しそうに足を踏み鳴らす。そして引きちぎらんばかりにカーテンを掴む。
「な、なのにさ、もう他の人を好きになったんだろ? 合コンにも行くって言うし……」
ええと。これはつまり、どういうことだ?
灯の文句を一から順に並べて考えると、まさかの可能性が浮上した。
「お、俺、せーまに告白されて悩んだ。たくさん、考えた。真剣だと思ったから、いっぱい考えてたのに」
「……なぁ、おい。ちょっと待て」
一気に距離を詰め、灯の肩にそっと手を置いた。直後、大きな目がこちらに向けられた。切なげに潤み、少しばかり熱のこもった宝石みたいな瞳。
「灯、俺に告白されて傷ついた? 裏切られたって思った? 俺のこと嫌いになってない?」
「えっ……? な、なにそれ」
せっかく俺に顔を見せてくれたのに、また逸らそうとしたから咄嗟に掴まえた。
最初のコメントを投稿しよう!