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「あっ! あの時何かごちゃごちゃ喋ってるなと思ったけど」 「え。聞こえて、なかったの?」  くっつけていたおでこを離して、「あぁ」と俺が頷くと、灯の頬が赤く腫れた。 「大体なお前、そういうことは俺が告白した直後が次の日くらいに言えよ。一週間も二週間も音沙汰なければ失恋決定だと思うだろ? 第一だな、あからさまに俺のこと避けてたじゃねぇか。コソコソ隠れてさ。メールの一つも寄越さないで」  うっ、と喉を詰まらせた灯が俯こうと逃げるので、そうはさせまいと顔を固定させた。 「だ、だって、恥ずかしいじゃん。あ、あんな真剣に告白されたの初めてだったし。せーま見ると息がおかしくなっちゃうし……俺、どうしたらいいのか分からなくて」  急にしおらくなった灯は、「ずっと、せーまのことばっか考えてた」と聞き捨てならない台詞を小さな小さな声で呟いた。  拒絶されない。  これまで培われてきた俺の勘が、そう告げる。 「なら、灯の返事をきかせて」  ほら、と視線で促す。灯は盛大に瞬きを繰り返してから、涙の浮かんだ目をそっと伏せて「わかんない」と言った。静かに涙が頬へ伝う。音もなくさらさらと。     
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