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 夏休み中の文句が一気に膨れあがった。 「ねぇってば、聞いてるの」 「あ、あぁ、……悪い。聞いてなかった。何?」  ていうか、誰だよと密かにツッコみながら、校則違反であろう茶髪の女子へつと視線を向けた。 「だから、放課後デートしてって言ってんの」  正直、入れ替わり立ち替わり声を掛けられるので女子の見分けがつかない。そうとは思っていない茶髪の女子は、期待いっぱいに目を輝かせてくる。その肩越しに、須田の横顔がチラつく。  丸い顎に細っこい首が半端に立てたシャツの襟に隠れている。少し伸びた髪が、耳の辺りでふわっと絡まっていた。笑うとそれが解けていく。柔らかそうな髪だな、と思った次の瞬間、真智が手を伸ばし、須田の襟を「もぅ、灯ちゃんったらだらしない」と文句を言いながら直した。「あ、ありがと」なんて律儀に礼を返す須田は、ほんのり頬を赤らめ、はにかんだ。 「あー悪い。ごらんの大荷物でね。まっすぐ家に帰りたいんだわ」  初々しいカップルを視界から外し、何の感慨も湧かない女子に遠回しの拒否を伝えた。賢ければ悟るだろう。 「半分持ってあげるって。ね?」  このタイミングで予鈴が鳴り、じゃぁね! と手を振って軽やかに去っていった。     
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