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という内容のものが延々とあった。進むほど不穏で乱暴な言葉が使われるが、後半には生涯計画を立てるようにと学校の先生みたいな諭が始まる。つまり、灯を養えるくらいの稼ぎを得られなきゃ話にならない、とういこと。その為にはどうするのか。
交際が始まったばかりだというのに、随分先のことを考えさせられる。面倒臭いな、自分には荷が重すぎる。というようなことは無く、確かにそうだと俺は考え始めていた。
と同時に、どこかで生きているだろう父を想う回数が増えた。
父は家族を捨ててまで手に入れた男と、幸せに暮らしているだろうか。
誰にも見つからない心の隅で、味方になってくれないか? という複雑な気持ちがあった。それは母を二重で裏切っていることに他ならない。
そんな密かな悩みを知らない俺の可愛い恋人は、わりと新鮮な姿を見せてくれるようになった。
「せーま、嘘付いただろ!」
教室で真智や白井と昼食を済ませた後、灯のアイコンタクトで視聴覚室へと誘われた。歩き方で何かに腹を立てていることは予想できる。ただ、幸せ惚けしている俺は灯に叱られることにも喜びを覚え、頬が緩むのを抑えられなかった。案の定、扉を開けてすぐ振り向くと、灯は俺に指を差してそう言い放ったのだ。
「何のこと?」
「昨日! 俺と駅で待ち合わせしたのに遅れただろ? せーまその時何て言ったか覚えてる?」
灯と二人きりでいるのは最小限に止めている。
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