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「まさか。泣かれたからそのまま帰るのも気まずかったんだよ。バス停まで送ったから、遅れた。本当にそれだけ」  拗ねた灯を宥めるために、距離を縮めて肩に手を置いた。一瞬だけビクッと大袈裟に跳ねたけど、振り払われなかった。 「な、なら……、そういえば言いのに」  消えてしまいそうな声でもまだ文句を言う。 「言ったら、今みたいにやきもちやかない?」    ぽんぽん、と子供をあやす様に灯の頭を撫でると、呻り声を立てた。それから急に身体を反転させて、俺の胸に飛び込んでくる。不意をつかれたものの、そんな素振りは全力で隠し、一歩足を下げて踏みとどまった。  灯の背中をよしよしと撫でて、耳元で「機嫌直して」とお願いする。それにはうんともすんとも返事が無かったが、ぷっくら膨れた頬に手を添えて、そっと上向かせた。強気な発言とは裏腹に、灯の瞳は心細そうに揺れている。 「灯しか眼中にないよ。信じて?」  気恥ずかしげに目を伏せると、灯はおずおずと瞼を閉じ、控えめに顔を上げてきた。その意味が分からない俺ではない。 「んっ……」    唇をぴったりくっつけて、身を捩る灯の腰を支えた。最初は探るようにゆっくり、柔らかな下唇を吸う。「やぁっ」と甘えた声が零れた瞬間に、舌を差し込んだ。 「……ふっ、ぁ」     
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