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果たして、デートは成立したのだろうか。
やれやれと頬杖をついていると、無視できないほどの視線を廊下から感じた。意識的にそれが誰のものか、とは分かったが、反応できなかった。
数拍後、須田の背中が遠ざかって行くのを確認した。
◆
居心地の良かった美術室は鬼門となった。あんな場面、二度と遭遇したくない。というより……、鮮明に思い出してしまうキッカケを一つも掴みたくなかった。
結果、普通に教室で食べることになったのだが。
「あっれ。王子、いつもみたくふらふら~、と秘密の美術室で食べないの?」
白井はサンドイッチを両手に掴み、交互に食べるという品のなさを披露しつつ、俺の隣にやってきた。離れた場所にいる椅子の持ち主に「借りるぞ~」と一言断って。
一緒に食べるつもりかよ、と内心毒突く。というか、美術室で食べているとしっかりバレているじゃないか。
「夏休みどーしてた? 誘いたくてもお前電話繋がらねぇし、メールも返さないもんな。今時さ、ラインもやらないなんてお前くらいだぞ?」
「基本、メール読まないって番号交換する子には言い含めてるから問題ない」
「うっわ、でた。王子発言きた。言ってみてー」
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