13

11/12
前へ
/148ページ
次へ
 灯との最初のデートが遊園地で、保護者同伴。まぁ……、いいじゃないか。そういう約束だ。 「あ、あぁそうか。灯と行けるなら俺はどこでもいいよ。ただ、今夜は悪い。珍しく母さんと約束してるんだ」 「え……、そう。そうなんだ」  母の名をだすと、灯の表情が急に翳った。その翳を言葉で表すと、心配と後ろめたさ、だろうか。 「あのさ、最近母さん雰囲気変わったんだ。前々は化粧もしなかったし、スカートも穿かなかった。髪も無造作に束ねる程度で、ただ働いて、家事してって感じ」  それに、笑顔も戻ってきている。俺を疑って監視するのに一生懸命だった頃と比べれば、だいぶ穏やかになった。  何を言い出すのかと灯が不思議に思い、眉を下げながら首を傾げる。 「いい男が出来たみたいでね。俺に紹介したいんだって。三人で食事するんだ」 「えっ」と口を丸めた灯は、視線をぐるっと巡らせてから「大丈夫?」と訊いてきた。 「もちろん。むしろホッとしてる。母さんには幸せになって欲しいから」     
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

386人が本棚に入れています
本棚に追加