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「静馬君、きっと戸惑っているだろうね。私みたいなおじさんがお母さんとお付き合いしてるだ。無理もないね」 「い、いいえ! 全っ然」  あたふた首を振ったが、上手く隠せたとは思えない。確かに色々と戸惑っている。それは何も、白髪交じりの男性が母の恋人だと知ったからではない。慣れないテーブルマナーにも気を遣うし、母の顔に泥を塗るような失態もおかせない。そして何より、こういった場所で食事を摂ることに、母が慣れていることにも驚かされた。知らぬ間にデートを重ね、二人の仲が温まっている証拠だ。 「え、ええと、遠野さんはその、もうお身体の具合は大丈夫なんですか?」 「あぁ、もちろんさ。ちょっと検査で引っかかってちょっと入院しただけだからね。ついでにしばらく休めって息子たちに言われてしまって」  更にそのついでに、世話をした看護師である母を口説いた、ということらしい。  遠野、と名乗ったこの男性は五十代半ばで、会社経営者。十年前に奥さんに先立たれてしまったという。息子さん、と言っても立派に成人した大人が、三人いらっしゃるそうで。親子で仲良く会社をやっているんだと。     
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