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エントランスを駆け抜けながら、「ごめん、ごめん」とひたすら心の中で叫んだ。母と遠野さんだけじゃない。灯に向けても謝っていた。自分以外の全てに頭を下げたい。
――真智です。灯ちゃんがね、発作を起こして救急車で運ばれました。
外は、まだ暴力的な雨が降り続いていた。ドアを開けて待つタクシーに飛び乗り、真智が教えてくれた病院名を告げた。
――もう大丈夫です。落ち着いてます。
スマホを握りしめると、もう灯のことしか考えられなくなった。
真智がくれた情報を頭の中で整理することで、何とか冷静になろうとした。
――静馬君には教えちゃ駄目って灯ちゃんが言うんだけど、これは私の判断です。その、どうせ蒼さん達が騒ぐと思うし……。
別に俺を責めるわけではない、と真智は遠慮しながら端的に教えてくれた。
どうやら灯は午後、顔色を心配された先生に保健室へ行くよう言われたらしい。実際微熱もあったようで、蒼さんに迎えを頼んで休んでいた。そこで偶然居合わせた女子に俺との関係を疑われ、詰問された灯は動揺が隠せなくなり、パニック状態に陥った。その様を楽しいと思ったのか、怒りに目が眩んだのかは分からない。とにかく灯のスマホをその女子が取り上げたという。
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