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 灯の隣にいるのが真智と陸さんで、ぶつぶつ文句を零しながら歩いているのが蒼さんだろう。 <だ、だめだめ! 殴るのもカメラもだめ! ていうか、せーま来ないし。絶対来なくていいからな、せーま! ……あれ、せーま?>  スマホをポケットにしまった俺は、深呼吸をしてゆっくり近づいた。電話が切れていると不思議がる灯に、「なんですって!?」と激高する蒼さん。そして「お~、度胸あるなぁ」と陸さんは感心する。一番早く俺に気付いたのは、おろおろと辺を見渡していた真智だった。 「せ、せーまは今夜、お母さんと大事な用があって、絶対、邪魔できないんだ。俺はほら、この通りもう平気だし。心配させて姉ちゃん達には悪いけど、せーまは何も悪くないんだから責めないでよ。お願い……。せーまの邪魔しないで」  切々と訴える灯の声に胸を抉られながら、「灯」と呼びかけた。気付いていた真智はもちろん驚かない。俺を殴ると息巻いていた蒼さんは、腕を組んで肩で息をするよう撫で下ろした。陸さんは「おぉ~」とか言いながらひとまずパシャ。しかもフラッシュだから目が眩む。 「な……、なんで?」  唖然と口を広げる灯。連なる長椅子を横切り、正面に俺がやって来るまで目で追いかける。 「来るのが遅くなって申し訳ありませんでした」       
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