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なのに、俺といったら「そうか」の一言で話をぶった切ってしまった。
「灯ちゃん大丈夫? 嫌なこと誰かに言われてない? 気にしちゃ駄目だよ?」
俺が一番気にしていることを白井がさらっと、訊きやがる。しかし都合がいい。どうせだから灯の反応を見守った。
「え……? あ、そんなことないよ。平気平気。ほら、俺元々からかわれやすいし。これくらい慣れてるよ」
灯の笑顔が作られたものかどうか、じぃっと見つめていたら後ろから「ちょっと、前詰めてよ~」と女子の声が飛んできた。慌てたのは灯で、「ごめん」と言って空いた距離を詰めた。謝るのは俺だ、悪い灯。と思いながら邪魔者を睨みつけてやろうと振り向くと。
「静馬ったら気を付けなさいよ。灯ちゃんにちょっかいかけるとまた誤解する子が増えるよ?」
「そうそう、灯ちゃんだってホモだゲイだって呼ばれて可哀相なんだから」
もちろん見覚えのない女子だが、二人はかなり親しげだった。腕まで掴んできたのでデートくらいしたのかもしれない。どちらにせよ鬱陶しい。何とか自然な形で引き剥がしてやった。
「灯ちゃんだって迷惑よねぇ~、静馬のせいであんな目に遭って」
「でもさ、あれって本当? スマホの待受けが静馬の寝顔って! まさかだよね~」
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