第1話:社長令嬢の本音

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第1話:社長令嬢の本音

 桜が舞い散る4月の初旬。全国の学校は入学式や始業式で忙しくなる時期。それはここ、県立奈雲高校でも同じだ。神奈川県の海沿いに位置する高校で、校舎は比較的新しい。平均的な学力を必要とするこの学校では、特に目立った生徒はあまり来ない。しかし今年だけは違った。  新入生とその親たちが校門から徒歩で入校する中、1台の黒いリムジンが校門前に停車した。そして降りてきたのは金髪碧眼の美少女。誰も寄せ付けないオーラを纏った彼女は当然のように新入生代表として舞台に上がっていく。後に難攻不落と影で呼ばれる彼女はスピーチの最初の言葉でこう言った。  「私の名前は磯鷲エマ。あの磯鷲コーポレーションの一人娘。だから私と対等に関われるとは思わないことね」 ◇◇◇  私がこの一般人ばかりの学校に来てからもう2ヶ月。そろそろ疲れてくるわよね。クラスの女子はずっとくっついて来るし……私のスピーチ聞いてなかったのかしら?  「エマ様。スキンケアは何を使ってるんですか?」  また1人増えたわ。しかも毎日同じような質問ばかり。流石は中堅高校ね。まぁ私もその一部なんだけど……  「特に何も使ってないわよ?」  私は満面の笑みで答える。外面は大事だとパパに言われてるからもう体に染み付いちゃってるみたいね。  「そんな~なんで隠すんですか~?」  こいつはやけに語尾が伸びてるわね。聞いてて耳が痛くなる。  「オホホホ。隠してなんかないわよ?本当に何も使ってないの。化粧もしてないし」  疲れるわ~。オホホホって私は何を言ってるのかしら。流石に作ってることがバレそうよね。  「え~信じられないです~」  あー、もうイライラする。さっさと授業始まってくれないかな……  「でも本当に化粧もつけてないのよ?......ほらね?」  私はポケットティッシュで強く顔を拭って見せた。化粧なんてしたことないからこれで落ちるのかはわからないけど、多分大丈夫よね?  「本当だ~!すごーい。憧れる~」  キーンコーンカーンコーン……やっと授業が始まったわ。これが最後の授業だからもうこの地獄は味わわなくていいみたいね。
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