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始まりは、小さな煌めきから…。
緩やかに頬を撫でる陽光に満たされた教室。
日直の私は、黒板の英文を消しながら、背中で同級生たちの声を聞いていた。
じゃあねー、また明日ねー、と交わされる度、教室は静けさを増してゆく。
春の微風が、ミモザの甘い香りを運んでくる。
教室ががらんどうになると、カーテンの揺らぎだけが時間の流れを表していた。
その袂には、透明な緑を輝かせる多肉植物たちが並ぶ。
入学して間もないというのに、誰かが持ち込んだのだ。
植物たちの喉の渇き具合を確認しながら、私は、今日もまた一日を乗り切ったことを胸の奥で安堵した。
女子というものは、恋の話が大好きだから、私はいつもヒヤヒヤしてばかりだ。
みんなの黄色い声と、朝露の弾けたような笑顔が眩しくて、心の暗い水底に隠した『小箱』が照らし出されるんじゃないか、そんな不安に駆られる。
高校生になってから今日まで、それが人目に触れぬよう、細心の注意を払ってきた。
日を追うごとに仮面は厚くなり、それと共に『小箱』は、震える程に寒い領域へと追いやられてゆく。
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