思い出のホットドッグ

2/3
前へ
/3ページ
次へ
A「ここのホットドッグ、本当に美味しいよね!」 僕が買ったホットドッグを頬張りながら彼女は笑顔で言った。 そして彼女の食べるホットドッグを横目に見ながら彼女の笑顔を見れるのは〝今日で最後〟なんだと思うと一層、悲しい気持ちになった。 B「そう、だね。」 A「どうしたの?そんな悲しそうな顔して!」 彼女は、僕がもう二度と会えないことを知らない。なぜなら、僕がみんなに彼女にだけは〝絶対に〟伝えないでほしいと頼んだからだ。 B「ううん。なんでもない。」 僕がそういうと彼女は笑顔でまたホットドッグを頬張り始めた。彼女と僕にとって、このホットドッグは、幼い頃の思い出の中で一番、鮮明に覚えている食べ物である。 幼い頃から身体が弱かった僕はずっと退院入院と繰り返していた。そんなとき、軽い肺炎で入院していた彼女に出会った。 外に出ては行けないと家族に言われていた僕だけど、初めて家族との約束を破り外に出た。そして彼女に手を引かれあまり見たことがなかった街を探検した。 お腹が減ると、彼女がお小遣いで買ったホットドッグを2人で半分こにして食べながらあの日と変わらない笑顔で美味しいね。なんて言いながら2人でホットドッグを食べた公園のベンチ。 彼女がお母さん役で僕がお父さん役のおままごとをして遊んだ原っぱ。 お花が好きな彼女のために花で(かんむり)や指輪を作ろうと思って見つけたお花畑。そして彼女と僕はここで結婚しようね、なんて約束した。 そして、治療という名の手術が嫌で逃げた僕とそれを追いかけて来た彼女と見つけた秘密の場所。 全ての思い出が懐かしくて、走馬灯のように頭の中を流れて来た。 僕は死にたくない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加