激闘

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 一番苦労したのは桃色っぽいタコ…もといフィラフステ星人声優調査長1号、仮の名を河本ゆりかだった、という話が後に語られる。なにより大変だったのが箱田の大根演技を修正するコトであった。箱田の声をサンプリングして合成したほうが早いと音声監督が頭を抱える始末である。一応、箱田自身も自分に声優の才能が、少なくとも同じ声優学校の今泉よりは無いと自覚しており、声優学校ではちゃんと指導されていたのだが。  箱田については今泉の発案で地上パートのヒロインから、深海パートで深海調査艇を主人公に乗り逃げされる調査艇母艦の女性艦長の役に変更となった。今泉自体が箱田に良く怒鳴られており、怒鳴る役なら演技は「あまり」必要ないのでは?と。それでも河本ゆりかが付きっきりで指導を重ね、収録もリテイクを重ねに重ね、監督からOKが出るまで半年近くを要した。地上パートのヒロインと主題歌は河本ゆりかが素晴らしい仕事をして、作品の質を格上げした。  広告も奮闘した。なにせスタジオ初のオリジナル長編映画である。映画会社のほうは代表取締役として潜入した元代表取締役調査員1号が、他の企業もフィラフステ星人のプロデューサーたちが上手く立ち回り、アニメ雑誌等に大きく取り上げられた。深海パートと地上パート別々の特報・PVを制作して、まったく違う印象を与えるコトにも成功した。  深海調査艇がロボットになるおもちゃのCMも人気が出た。おもちゃが水中で空気の泡を漏らしながら変形する実写映像が子供だけでなく、大きな子供たちにウケたのである。昔は良くあった画だったのだ。  そして、ついに映画公開日が来た…。
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