本当の嘘

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   涙を拭いて皆が舞台に上がって整列した時に事件は起こった。皆が耳に隠れるように装着しているイヤホンに日本海溝遠征基地の長から涙声で音声が入った。  「電磁波の障害か故障か不明だが、擬態システムが停止する。皆舞台から…」  長の話の終わる前に舞台の上、箱田以外の全員が人間の擬態からカラフルな、いわゆるタコ…もといフィラフステ星人本来の姿になったのである。  「あ、フィラフステ星人!」  子供の声が響き、固まっていた観客が一斉にざわめき出した。  「なんだ、あのタコ!」  「ステージ上でCGなんか使える環境の劇場じゃなかったよな、ココ!」  「宇宙人、宇宙人なのか?」  発覚してしまった。フィラフステ星人が実存して地球にいるコトが。館内はさらに大きな騒動に…なる前に!  「皆さん静かにして下さい、ちょっとだけ静かにして下さい。」  箱田の毅然とした声が館内に響いた。そして、その時に中段に座っていた一人の老人が手を挙げた。すかさず箱田がマイクを老人に渡すように館の人間スタッフを促した。  「これは、このアニメに出てくるフィラフステ星人とは君たちなのかね、本当に?」  「はい、私たちは40年前に地球から受け取った電波、「帰宅後のステマ・まじか」の影響でアニメーション制作をやるために来ました。私も人の形に擬態して動画から始まり、監督まで修行を重ねました。この映画は艦長役の箱田さん以外、全てフィラフステ星人の手による物です。私たちのあの電波への回答…あなたへの恩返しなのです。」  茶色っぽいタコ…フィラフステ星人となった田沼監督がマイクを手に取って説明した。  「当時、たしかに「帰宅後のステマ・まじか」の宇宙放送は実施しましたが、まさか本当に受信した宇宙人がいたとは。申し遅れました、田沼監督はご承知の模様ですが、私は「帰宅後のステマ・まじか」の監督をしていた箕輪と申します。」  
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