発覚

3/3
前へ
/13ページ
次へ
 「それは昨日オーディションに落ちたアタシへの自慢?ふざけんなタコ、アンタの演技で人間がタコに見えるかっちゅーの。そりゃ、私よりは全然上手いけど!」  「いや、俺の演技力に加え、あなたが麦焼酎を2本とワイン4本空にしたからでしょ。だいたいオーディションに落ちた残念会で言えないじゃん、俺は受かったぜ…とか。」  箱田がそこそこ美人な顔を、最大限に怖くして怒り出す。二人は夜間声優学校に通っていた。箱田はOL、今泉は交通量調査のアルバイトをしながら夢へ向かっていたのだ。いや、今泉は任務と…。  「だいたい、学校のオーディション掲示板にもネット情報でも、深海冒険マリンレスキューなんて番組見たコトないわよ。私に隠して裏ルートでも知ってた?いや…ドコのオッサンさんと…。」  「先輩に蝦山スタジオで制作進行している人がいて、そこのオリジナル…隠すつもりはなかったんだ、スマン!」  (なにか、フィラフステ星の調査員とかどうでもいい方向に進んできた。いいぞ、この勢いでなんとかゴマかさないと…) と、今泉が思った瞬間、箱田が言い出す。  「わかった、タコじゃない!って言うのなら…私に役をください。この際、アンタが今泉クンでもタコでも良い、私にも役をください!ガヤとかじゃなくてエンディングのテロップにしっかり名前が流れる役をください!」  ガヤとはその他大勢…ともかく号泣する箱田を誤魔化すには、もう深海冒険マリンレスキューというアニメに箱田を出すか、箱田を殺すしかフィラフステ星人の秘密を守る方法はない。そして、もちろん箱田を殺すという選択肢は今泉にはない。フィラフステ星人は平和を好む、そして今泉は箱田を…。  「先輩に話してみるよ、少しだけ待ってくれ!」  箱田にそう言って、今泉は覚悟を決めた…。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加