激闘

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 もちろん、主となる映画「深海冒険マリンレスキュー」のほうの制作には力を入れた。原画と動画、脚本、演出、監督の調査員を経験し、アニメーション業界で実績を認められ蝦山スタジオの代表取締役調査員となっていた田沼が「監督」に復帰した。監督・演出調査員の消耗が激しかったコトと、田沼自体が一番野望に燃えていたからだ。アニメ業界は田沼の監督発表に「蝦山スタジオが新作に全てを賭けている」と騒然となった。  企画の骨格はアッサリと決まった。箱田に「フィラフステ星人」とか「声優」のワードを聞かれているコトから、自分達そのままの設定にした、するしかなかった。深海調査艇を勝手に動かして深海を漂流した高校生のカップルがフィラフステ星人に助けられる平和アピールの深海パートと、40年前の電波によりアニメ制作を目指すフィラフステ星人の一人が声優学校の生徒として生活する地上パートを組み合わせて話を構成する…。  しかし、監督の理想は高い。商品展開上で必要とプロデューサーから海底調査艇をロボットに変形させろという要求も出てくる。フィラフステ星日本海溝遠征基地の長の「少し年齢を下げるべきではないか」との話については他の全てが否定して事無きを得たが。やや説明不足な面もあるが、そこが好きな大人たちに向けて深海パートと地上パートを別々に深夜アニメとして放送する大胆な計画も盛り込まれた。  脚本家3名と田沼監督によって脚本は収まり、続いて作画に入る。フィラフステ星人の作画班も他の仕事を全て捨てるまでには至らなく、大変な苦労をした。演出に煮詰まった田沼監督がふらりとやってきて原画を凄い速度で描いて行ったり、他の作品が間に合わない時に、こっそりと自分でも描いていた制作進行の間島が、手の空いた時間で動画をクオリティを落とさずに数カット上げた時には他の動画の者たちから喝采も沸いた。
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