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 二人は双子。いつも元気で仲が良く、魔法スクールに通っている。 家が郵便屋さんで、こうして毎朝手伝いをしている。 「本当にそれ好きだな……」 兄は、目の前をスキップしている妹手元を見て言った。 それは妹が毎朝、仕事終わりに朝食として買い食いしているホットドッグだ。 ちなみに、兄の後ろの赤い店。金色のロゴで店名が書かれていて、おまけにガラスのドアとは、何ともおしゃれだ。おしゃれなうえに、店長が優しい。こうして、早朝にもかかわらず、パンを焼いて妹に渡しているのだから。 「だって―美味しいんだもん! やっぱり一日の始まりはこれよね~。うん、毎日三食でもイケる!」 「…………太るぞ」 「兄さんのいじわる!」 そう言いつつも、ガブリと幸せそうに頬張った。 「……にしても、謎よね」 「唐突に何さ」 「なんでわざわざ、一軒一軒歩いてポストに入れるのか! この魔法世界なら、魔法で一瞬なのに……。パパもママも”ちゃんと自分たちの足で行くんだよ~”って。もっと毛布にくるまってたいのに~!」 ケッチャップのついた頬を風船のように膨らませる妹。 ――兄は知っていた。なぜ、魔法を使わないのか。 それは、新米配達員だったパパが、郵便先の娘だったママに偶然出会って、恋が始まったから。  とどのつまり、”いろんなものにふれて、出会うため”、だそうだ。兄は昨年それを知り、手伝いがもっと好きになった。 澄んだ青空から差し込む朝日。それに反射し、幻想的な現象(ダイヤモンドダスト)を見せてくれる雪。元気いっぱいに羽を伸ばす鳥達。――見慣れた景色が、違って見えるのが楽しい。 「妹はまだまだオコサマだからな」 「なによそれ! 同い年じゃない!」 「ケッチャップついてる」 「お、本当だ」 妹は鞄からティッシュを取り出し、拭ってしまった。それと同時に、白の丸い紙包みを取り出した。何かと思って眺めると、ホカホカのホットドッグが顔を出した。 「もう一個食うの?!」 「育ち盛りは食べないと! 兄さんは全く食べないね」 「無駄な肉をつけたくないからな~」 「もうっ!」 今日も、双子の元気な声がこだまする。
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