第4章 #2

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「栗栖は?」 「あちらで女性達に囲まれています」 「なるほど……」 隅にいるけど、渡瀬さんの事見てる人も沢山いるんだけどね。 と心の中で思いながらパンを急いで食べると、飲み物を一気に飲んでここから離ようとした。 「では、私も引き続き服を見てきます」 「えっ?もう行っちゃうの?」とは言われたが、案の定、私が離れると渡瀬さんにもお声が掛っている。 先程の場所に戻ると、高橋さんにメールで雰囲気の報告もしておいた。 ブラウスの続きから見ようとラックを覗いていると、今度は綺麗めなパンツのお出ましだ。 『これ、仕事で履けそう……』 細身だが、ウエストがゴム使いになっていて、パンプスと合わせても良さそうだ。鏡で見てみると、丈も丁度良さそう。 試着がしたい位気になってしまった。 「おい、他のブランドのパンツを欲しそうに見てるんじゃない!」 背後からの声に「キャッ、すみません」と肩をすくめると、いつの間にか社長が隣にいて小さな悲鳴をあげた。 「しかも、何買ったんだ、それ?」とちゃっかりショッパーも指差されている。 「ポイントメークを進められて、つい買ってしまいました」 ジロジロを見られた後「そうだな、何か可愛いかも」と思わぬお褒めの言葉を貰えた。 「あ、有難うございます」と喜んだもの束の間で――。 「そのまま、あっち1周して来て」と変な指令を出された。 仕方なくブラブラと回ってみる。 ゆっくりと歩いてから社長の元に戻ると、又女性達が集まっていた。 私が邪魔だったのだろうかと端の方で待っていると、そっと戻って来て「よし、帰るぞ」と促されてしまった。 「そういえば、渡瀬さんもいらしてましたよ?」 「――え?マジで、何処?」 「スイーツとパンの所で出会いましたけど、もういらっしゃらないかと」と言い終わると、入り口付近を人をかき分けるように歩き出す社長。 さすがにもう居ないだろうと思ったが、シャンパンが置いてある辺りで、渡瀬さんは綺麗な女性達と会話をしていた.
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