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第6章 #2
『貴方もイケメンです』と心でツッコミ、自覚がないのも罪だなと思ってしまった。
「そろそろ、寝る?」と渡瀬さんが言うと「ああ」とすぐに返事をしたのは栗栖社長だった。
結局最後まで居て、リビング内を移動しただけの気がした。
「そうだ、そのうちコンパしてみない?」と閃いた渡瀬さんに「そんなんの参加はNGだ」と答える社長は私のマネージャーみたいだ。
挨拶をしてから2階に上ると、ベッドに倒れ込み「なんだか今日も疲れた」と天井を見上げて呟いた。
シャワーやお手入れを済ませ、ベッドの横の小さなライトをつけると仰向けに寝転がった。
額に腕を乗せ「いい事ないかな」と考えていると、突然パチッと音がして部屋が真っ暗になった。
停電みたいだが「縁起が悪いんですけど」と身体を起こした。
幸先は不吉だとでも言われてるみたいだ。
静かな暗がりに一人で居ると心細いが「皆もう寝てるよね」と目を閉じる。
――ここで、下手に動いて階段で転んだりしたら大変だ。
『ちょっと怖いな』と思ったが、スマホもバッグの中だしギュッと目を閉じて耐える。
「ブーン、ブーン」とバッグの中からバイブ音がしたが、目が慣れてないし取りに行けない。
3人の内の誰かが、架けてくれてるんだろう。
「ごめんなさい。暗くて怖くて目を瞑ってて、電話に出れません」
暫く鳴って音は止んだが、部屋の明かりはまだ復旧していない。
「トン、トン」と今度はドアをノックする音でビクッとなる。
「――すみません、真っ暗で何も見えないんです」と部屋の中で返事をした。
するとカチャッと静かにドアが開き「大丈夫か?」と一筋のライトが部屋を照らす。
顔の辺りに光がくると眩しくて目を閉じた。
「あ、すまん……」
近づいて来た栗栖社長は私の手を引いてくれ、ベッドからゆっくり降りたつもりだったが、上手く感覚がつかめず「わぁっ」と思わず抱きついた。
ライトが手元から落ちてカシャーンと大きな音が鳴る。
両手でしっかりと支えてくれた腕は、とても力強かった。
「す、すみません……」
無言のまま抱き寄せられると、胸に頬を埋めてしまい、社長の体温がじんわりと伝わってくる。
『思わせぶりな事はやめて』と頭の中で警戒のサインが響く。
勘違いがどんどん大きくなり、切り替えが出来なくなりそうで怖い。
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