第6章 #2

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「渡瀬さん、大丈夫でしょうか」 「あ、あぁ。男だし大丈夫だと思うけど?」 私の手を握り直すとライトを拾い上げ、仕方なさそうに歩きだした。 手の体温が熱いがこれは私のせい?それとも……と頭で考えてしまう。 渡瀬さんの部屋をノックすると「栗栖?」と返事がきたので「私も居ます。大丈夫ですか?」と続けた。 部屋のドアがそっと開いたかと思うと「中々つかないから、ちょっと心細くなってた」と言い私にキュッとしがみつく。 『か、可愛い……』 王子様の腕はゆっくり解かれた後、今度は私をすっぽりと包みドキドキしながら固まってしまう。 「――どさくさに紛れて抱きつくな!ホラ、リビング行くぞ」 3人で手を繋いで、階段を降りていく。 頼りになるのはLEDライトの懐中電灯のみだが、イケメン2人に挟まれて心臓がバクバクと波打っている。 ソファに渡瀬さんと並んで座ると「栗栖は暗いの全く平気そうだね」と驚いた声が聞こえる。 「あぁ、むしろ暗い方が好き」 スタスタと別の部屋に向かい戻って来た彼の手には、何本かのキャンドルがあった。 テーブルの上にフワッとしたあかりが灯され、さっきまで不安だった暗闇が、一気にロマンティックな雰囲気になった。 「これ、念の為に……」 毛布を私の隣に置いてくれると、キッチンに向かって歩いていく。 一つしかないので足元にかけると、渡瀬さんにも少し被せた。 「有難う、桜ちゃん」 キャンドルの火と毛布の暖かさで安心したのか、忘れていた睡魔が少しずつ訪れる。 ソファに身体を預けると「こうしてると、安心して眠れそうだよね」と渡瀬さんも背中を倒した。 コップを手に戻って来た社長は「何で2人で包まってるんだ」とキャンドル越しに恐い顔をしている。 私はそんな思わせぶりな態度に対抗するように、顔をワザと見ないようにした。 「栗栖もこっち座る?暖かいよ」 私の隣に少し空きはあるが栗栖社長が座る訳がないし、このまま眠ってしまおうかと目を閉じた。 「痛っ!」と声を上げると、社長が私とソファの隙間に強引に割り込んできて、尚かつ私の片膝に少し膝を当てて座ってきた。 「ホ――ント。暖かいな」 『――ワザとだ!』 栗栖社長を見るとニヤリと口角を上げていて、仕返しのつもり……かもしれない。 おまけに「コーヒー飲めば?」と澄ました顔で飲み始めた。
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