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見た目は何とか普通に戻った筈……。
鏡でチェックをしてから下に降りると、社長達は別々に座っており毛布も片付けられていた。
「桜ちゃんも食べよ?」
パンやサラダにキッシュが並んでいて、さすが師匠は手際がいい。
「はい。いただきます!」
空いてる席は長谷川社長の隣で、そっと座ると静かに食べ始めた。
「美味しいです!」
「有難う」
ニコッとする渡瀬さんに「これじゃあ、女の影なさそう……」と、毒針を吹き矢で飛ばす長谷川社長は本当に一言多い。
渡瀬さんも慣れているのか、ペロっと舌を出しただけだった。
朝食が済むとタクシーを手配し、それぞれ帰る事になったが……。
「ジャンケンポン、あいこで……」
呼んだタクシーは2台で、私との相乗りは誰にするかが決まらないようだ。
方向でいえば栗栖社長だが、何となく今は気まづいし、出来れば他の人が良いいな。
「やったぁ!僕の勝ち」
勝者の渡瀬さんと乗る事になった私は内心ホっとしていた。
1番危険が少なそうな人だし、おまけに優しい王子様だ。
「昨日は桜ちゃんも含め大変だったね。俺大人になって『ざこ寝』するとは思わなかったけど、結果楽しかった」
「――そうですね。長谷川社長には驚きましたが、私も楽しかったです」
「あの2人が同じ職場の人と交流持ったり、僕が呼ばれたりも珍しいから、桜ちゃん余程気に入られてるんだね」
「そうなんでしょうか、振り回されてる気がしてますけど」
帰りの車中では、昨日の出来事や社長達の話題が途切れなかった。
「桜ちゃん、今度パン屋さんのハシゴしよーね」
「はい、その時は又連絡下さい。お腹を空かせておきますので」
渡瀬さんにプッと吹かれたが、ニコッと照れ笑いしてお別れをした。
ポストを確認し、家の中に1歩足を踏み入れると大きな溜息が出た。
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