第8章

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「分かったから!展示が終わったら好きなの全部やるし。どんどん着て、宣伝してくれたらいいよ」社長が呆れか顔で声を掛けてくれる。 「有難うございます!」 「これからは高橋のチームにセカンドは回すから、もっと集中できるようになる」と社長も手を動かしながら作業に入った。 チェックすると、改めて渡瀬さん達の仕事の質の良さに感激してしまう。 ここまで丁寧に仕上げてくれるから、ずっとここに頼んでいて、信頼関係が途切れない訳だ。 休憩を交代で取り、私の番が来ると心弾ませて食堂に足を運ぶ。 新しいパンが棚に陳列され、自分でトレーに乗せるスタイルはベーカリーといっても過言ではない。 他の人目もあるので、遠慮気味に3つ選び、コーヒーを買って席についた。 「――うん、美味しい」と思わずニヤリと笑みが零れる。 甘い系と総菜系と両方食べたが、どちらも好みの味で、持ち帰り用に何個か買いたいくらいだ。 すぐに平らげて、コーヒーを飲んでいると「どうだった?」と渡瀬さんが気になる様子で近づいてきた。 「最高です!」と綺麗に食べ終わったトレイを指差して微笑んだ。 「桜ちゃんにそう言われると、凄く嬉しい」 渡瀬さんも安心したように4つトレーに乗せて戻ってきた。 こんなに菓子パンばかり食べて、よくスタイル維持出来てるなと疑問に思うし、多い時は5~6個食べているのを見た事がある。 「渡瀬さんて、太らない体質なんですか?」と羨ましい原因を探りたくて質問してしまう。 「一応、パン以外の食事は気をつけてて、後は少し運動はしてるよ」と サラリと言われるとズキッと後ろめたさが表れる。 「――う、運動。私は完全に運動不足です」クスッと笑いながら渡瀬さんは3つ目のパンを口に運んだ。 「今度ジムで運動してみる?気に入ってる場所あって、自分のペースで出来るから結構気に入ってるだよね」 不思議な事に渡瀬さんからジムと聞くと、何故か女子力高い気がするのは、私だけだろうかと首を傾げた。
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