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「そんな熱さを持ってる奴は、俺の傍で軸がぶれないように見張って欲しいし、支えになってもらいたい」と真っすぐ見つめられた。
「見張り役……ですか?」と聞くといまいちピンとこない。
「俺の補佐かな?――たまに代わりになってもらう時もあるかも」
「えっ?!」と顔が強張った。
「でも楓も、サポート役は桜がよさそうなんだよな。そんなのコンサルタントに任せてしまえばいいのにさぁ」
出来れば私も経営の方の勉強よりも、まずはデザインを側に携わりたいと思っている。
もっと商品と触れていたいし、作る魅力に取りつかれているからだ。
「だから、俺に『人生の少しの時間』を投資してみてくれない?」と妙に神妙な面持ちで言われると、逆に戸惑ってしまう。
「はい、――そのつもりで働いてるんですけど」と普通に答えてしまう。
「いや、そうじゃなくて。なんて言えばいいんだろ、自分にイラついてくる」
拳を握り肘をついて頭を殴打するので、思わず社長の腕を掴んで止めに入った。
最近避けてたから、仕事を辞めるとでも思っているのだろうか。
掴んだ私の腕を、更に上から手で覆うようにして身体を引き寄せられると、ヨロッとして社長の膝の上に座る体勢になる。
顔が至近距離にくると、思わず目を伏せたが、肩をしっかり抱きしめられて鼓動が早まった。
――我ながら、こういうとこ純情だと思う。
思わせぶりな態度は慣れた筈なのに、イチイチ赤面してしまい、身体の関係もあるのに頭が真っ白になるくらい動揺もする。
回された手が首元に触れ、ビクッと身体が反応し顔を近づいてきた。
――久しぶりのキス。
避けてきたのに、どこかで嬉しいと思ってる自分が可哀想になってくる。
手を繋いでベッドに向かう時も、この先が分かっているのに、冷たく断る事もできない。
カーテンをしてもまだ明るいせいか、服を脱ぐと社長の胸板や腰回りが生々しく見える。
私もそんな風に見えてるのかと思うと恥ずかしくなり、顔が見えないように彼の首に手を回し、しがみついていた。
「これだと挿れるのムズいんだけど……」と耳元で囁かれドキッとする。
「あ、ごめんなさい」
枕に頭を置き正面で向き合うと、社長の顔も若干赤みがかっているのが愛おしく思え、見惚れていると照れ隠しのようにキスを落とされた。
――そんな顔をされると、惚れた私が拒める筈もない。
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