第8章

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でもこの関係を続けていると、ズルイ気持ちも浮かんでくる。 何も言わなければ、また社長の腕で眠れるかもしれないし、会いにきてくるよと悪魔が囁く。 片思いみたいに胸が苦しくなるというよりは、近くにいるけど遠すぎて、叶わぬ思いにもがき苦しんで病気になった気分だ。 社長にだって、私の気持はヤンワリと伝わってると思うのにな……。 他の女性達もこんな淡い期待を持ってお相手をしてるんだろうか。 社長達は『好き』って気持ちを利用して弄んでいるのだろうか?――どちらにしても最低だ。 「今日はこれ飲んだら帰るよ、目的は桜だったし。ホットドッグのストックは作っておいて」 入り口までのお見送りの時も当たり前のようにキスをされ、『こんな態度だと誰でも勘違いするわ』と心でクレームを言った。 これ以上ヘコみたくなかったので、シャワーで紛らわす事にした。 『まだ水を弾くから若い証拠かな』 他の女性達に比べて、私はスタイルも顔も自由な立場もなく、何の武器もない。 分かっているけど、認めたら社長が傍に居なくなりそうで、ため息をつくしかない。 髪乾かしたら、着替えて買い出しにでも行こう。 ダラダラと準備をしコートを羽織って外に出た。 お目当ての物は一通り手に入れたので、トボトボと帰宅していると「お疲れ様です」と声を掛けられ顔を上げた。 高橋さん――が、何の用なんだろうと、目をパチパチさせながら見つめていた。 「少しお話があります。荷物を置いたらここへ来てもらえますか?」 「――はい」 待たせないように駆けだし家へ入ったが、何を話されるのかビクビクしていた。 深呼吸をして自分を落ちつかせると、高橋さんの元に向かい、車の中から合図され助手席に乗り込んだ。 「坂田さん。中々相談してくれませんね、社長達の事」と一言めから地雷を踏まれた。 「――あ、あの……」 「男性だから言いにくいですか?でも2人に興味を持たれてるのは、事実ですよね」とストレートに言われる。 「そう……なんですかね」と答えておくしかないし、正直に『遊ばれてる』とは言えない。 私に缶コーヒーを渡すと、高橋さんも静かに飲み始めた。
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