第8章

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「坂田さんは実感がないかもしれませんが、私はそう思ってます。それで、もしかしてどちらかが気になってしまったという事はありませんか?」 「…………」 「今は無礼講でいいですよ?私から誰かに漏れる心配はありません」 「私がどうのと言える立場ではないので……」と答えに詰まる。 余計な事を軽々しく口に出来ないし、高橋さんも知ってる筈なのに、なんでそんな事を聞くんだろうと不思議に思った。 「では、どちらかまだ決まっていない状態ですか?」 「…………」 「もし、決まっていないようでしたら――その関係をもう少し続けて頂きたいのです」と視線を前を向いたまま、信じられない言葉に目が丸くなった。 「――えっ?!」と缶コーヒーを落としそうになる。 イキナリ何を言い出すのかと高橋さんの顔を凝視すると「桜さんが来た当初、そんな心配は全くしていませんでした」とハッキリと言われる。 「……はい、分かります」 それは自分でもよく分かっている。 「でも仕事をしていく中で日々、社長達が変わっていくのが分かりました。特に長谷川社長は、以前より熱心に取り組まれてホッとしています」 『あれで!?』 口には出さないが心でツッコミを入れていた。 そう言われてみればおフザケをナシだと、仕事の処理は凄く早いし、判断も冷静で的確なので、真剣に取り組んだら色々な事がスムーズに運ぶとは思う。 「そこで、坂田さんにも長谷川社長に興味を持って貰えると嬉しいなと思ってました。女性関係の事もあるので、中々難しいとは思いますけど」 「……そうですね」と苦笑いで誤魔化す。 「だた誤算は、栗栖社長も興味を持ったという事で――よく考えたら無理もないですけどね。ウチの服が大好きで、仕事にも積極的なあなたが気にならない訳がない」 飲み終わったコーヒーをホルダーに収めると、「カフェにでも行きましょうか?少し喉が渇きました。」 高橋さんの表情は色んな覚悟を決めてそうで、尚更続きを聞くのが怖いが、このままでは帰して貰えそうにない。
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