第8章

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ハッしたように頭を起こすと「栗栖社長は特定の女性が出来たと噂が流れてますよね?叶わない恋をするくらいなら、長谷川社長に傾いても良くないですか」 「どうせ遊ばれるなら、長谷川社長にしろと……?」 「すみません、傷つけるような事ばかり言ってますね。社長達を想って余計な働きかけをしたようです」 ラテをゴクゴクと飲みながら、普段は冷静な高橋さんが焦りを見せている。 自分勝手な内容を押しつけられているにも関わらず、何だか同情したくなってきた。 「高橋さんは特定の人いるんですか?」 「そうですね……『仕事が恋人』ってとこでしょうか?遊びはもちろん楽しんでますよ」とイケメン部分は全開のようだ。 「なんだか縛られてるように見えて……悪魔な2人に」と意図せず呟いていた。 「フフッ、悪魔ですか、確かにそうかもしれませんね。でも、私が好きでやってる事なんで強制ではないんですよ」 こんなに一途に社長達の事を考え続けてる人なのに。 よくあの合宿の時に八つ当たりできたなと、長谷川社長の顔が浮かんできて『やっぱり悪魔』だと思った。 「きっと高橋さんが実力あるからだと思います。考えてみて下さい、長谷川社長が、使えない人をいつまでも傍におく筈がありません」と我ながらいい言葉が出てきたと思った。 「あははは……それも一理ありますね」とくったくのない笑顔にドキッとした。 高橋さんがこんな感じで笑う人だとは意外で、今は恐らくオフのスイッチが入ってるのだと思われるが……これは反則だ。 「私は坂田さんは、渡瀬さんみたいな人がタイプだと思ってました」 「ゴホッゴホッ!」 見惚れてた罰なのか、予想してなかった変化球に、ラテが器官に入りむせるが、高橋さんが優しく背中を擦ってくれた。 『渡瀬さん、確かに王子様なんだけど……言えない!マジなら絶対に』と頭に過る。 「――まさか、渡瀬さんともそういう関係なんですか?」 「いえ、至って健全です。パンを食べに行く程度です」 ジッと私を見る高橋さんは、審議を判定中だと思われたが、ここで嘘を言った所で誰にもメリットはない。 暫く無言で見つめた後「そろそろ出ましょうか」と立ち上がった。
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