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「えっ、あの……ちょっと考えたりしないんですか?」
「――なんの為に?」
「いや、衝動買いしてないかとか、本当に後悔しないかとか、大きい買い物をする時はちょっとお茶して悩んだりしません?」と思わず腕を持ってみた。
キョトンとした顔をした後「それが女子の買い物の仕方か、コートとか単価の高い物を買う時も『他の店も回ってから』とウィンドウショッピングしたい的なヤツ?」とため息ついて話している。
「まぁ、そのような感じです……」
「でも男は『目的買い』が多い。冬になった、アウターがない、だから買う……という訳で、覚えといて」
ポカンと目を丸くする私。
上手く丸め込まれてレジに向かう堵亜を止める事は出来ない。
私も払う気でレジについて行ったのに、サッサとカードで支払いを済ませてしまう。
「あの、気を使いますし、こんなに買って頂くなんてできません」
「俺がいなきゃセミダブル不要だったろ?だから気にしなくていい、あのままだと俺が困る」と譲らない。
そこまで甘えてもいいのかなぁ……何となく落ち着かないでいると「そんなに気にしなくていい。きっちり身体で払ってもらうから」と口角を少し上げた。
イケメンの余裕気な笑みは、綺麗過ぎて少し不気味。
ハッ気づいて顔を赤めると「何か勘違いしてない?もちろん仕事でって意味だけど」とニヤリとされる。
「い、言い方紛らわしいですぅ」と勘違いしてた私の失態を含め、顔全体が真っ赤になり頬を押さえる。
仕返しに堵亜の肩をポンッと叩くと、再度二カッと笑った顔が可愛すぎて……その手を彼の腕にそっと回した。
配送は一週間後で、伝票を自分の財布に入れると「来週の予定は決まったから空けといて。ちょっとお茶でもする?」
「はい」と口元が緩む。
駐車場に戻る際も、何となくそのまま腕を組んだままで、初めの一歩は勇気がいったけどその後は意外とスムーズだった。
『挑戦してみるもんだな……』
電話に続いて私から腕を回してみたが、期待以上の反応で好きな気持ちは加速する一方だった。
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