最終章 #2

4/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
週末に甘い時間を過ごした私は、それからは別人のように仕事に打ち込む事ができた。 週末は堵亜からデザインについて個人レッスンを受け、自分でも勉強に励んだ。 元々自社ブランドが好きすぎるので、どんどん吸収していけるし、大好きな先生のおかげでもある。 おかげで次のデザイン企画に参加する事に決まり、毎日が楽しくて仕方がない。 たまにお互いのデザインが褒め殺しの時はあるけど……。 でもビジネスとして『売れる・売れない』の判断はお互いシビアな目を持っている。 私は販売員として店頭に立っていた事があるので、ニーズも把握している。 切磋琢磨しながらブランドを輝かせていける事に、やりがいと幸せも感じている。 最近は、長谷川社長も対等に扱ってくれてるような気もする。 たまにお茶目なジョークは言ってくるけど……。 L-Room内でも『自分で出来る事はやる』な空気になっているが、それでも私は内勤の時は、朝のお花とコーヒーの準備は欠かさない。 気持ちの切り替えになるいい習慣だし、これがここに来て初めての仕事だったので、いつまでも初心を忘れないためにも。 堵亜は最近朝は打ち合わせをする事が多く「桜おはよう、今日は堵亜打ち合わせだよね?相手してよぉ」と声を掛けてくる。 「長谷川社長、私次のデザインの企画がまだ終わってないんです」 「だって、せっかく邪魔者がいないんだし。この頃俺を放置し過ぎだよね?ねぇ、高橋そろそろ別れないかなぁ?」と振られた高橋さんも苦笑いするしかない。 最近、都合の悪い事は『聞こえないフリする』という技を覚えるようになった。 社長はつまらなそうに「出たよ。シレッと無視して……高橋も聞こえないフリするの?」 「さぁ。私は何とも。お互い相思相愛に見えますので」と言われると、自然と私の顔がニヤけてしまう。 第三者からそう思われる程嬉しい事はない。 「ヤラシイ、嬉しそうな顔して。仕事でもしよ」と興ざめしたのか、社長は諦めて席に着き、私は作業のスピードを加速させた。 今日は渡瀬さんとの『パンランチ』があるので、どうしてもキリがいいとこまで終わらせておきたかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!