第2章

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第2章

外の様子を伺おうとノブに手をおくと同時にドアが開き、勢いでヨロッと倒れかけた。 「おぉ、悪い!手伝おうと思って……」 社長が同じタイミングでドアを反対側から開けたようだ。 「作業は一応終わりましたので、ダブルチェックいいですか?」 ここで可愛い女子なら「きゃっ!」とか言うのかもしれないが、私は平然を装い冷静に口を開く。 「えっ!?もう全部終わった?」 「はい……」 社長はタブレットを見て、信じられないという顔で照らし合わせをしている。 「あの、お手洗いに行ってきていいですか?」 「ああ、休憩もしてきたら?」 作業の手を止めずにそう答えられたので、私は『ラッキー!』と部屋を出る事にした。 見回しても、何処に何があるのか分からない。 キョロキョロしていると「迷いました?」と聞こえ カジュアルな服装の男性が立っていた。 「はい、すみません…初めて来たので分からなくて」 「今から僕も休憩なので、案内しますよ」 ――爽やかな笑顔の優しそうな青年だ。 彼は私を案内しながら、休憩する場所やトイレ等を教えてくれた。 朝から感じの悪い人にしか会ってなかったので、天使のように見える。 休憩室は思っていたより開放感があって、軽食も食べれるのが素敵な感じだ。 「有難うございました」 食事も出来てお腹も満たされるし、親切にしてもらってテンションも上がり、ワクワクしながらメニュー表を見ていた。 喫茶メニューのコーヒーセットを頼むと、隅の方に座ってパンを頬張る。 噛みしめるたび感動し、働いた後の食事を有難く頂いた。 すぐに平らげてしまうと、飲み物も足りなくなっていた。 追加でカフェラテを注文し、一息つくと「珍しいです。メーカーの方がここでガっツリ食べたり飲んだりしてるの見たの」 ――と先程の青年が、同じ席に座って来た。 「あ、ごめんなさい。お腹も空いてて喉もカラカラだったので」 「ここのパン意外といけるでしょ?」 「はい凄く美味しかったです!もう1つ食べたいのを我慢しました」 と言うと、彼は嬉しそうな笑顔を向けてくれた。
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