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「実は、社長室に桜ちゃんのご指名が来たの」
「えっ!」
スプーンの手が止まり、驚きのあまり固まってしまう。
「私、何か失敗でもしたんでしょうか……」
突然の異動に加え、この部署から外されるショックで言葉が続かなくなる。
「いや、違うの!本当は大出世なんだよ?社長の近くで働けるって。色んな勉強もできるし」
そう言われても、噂を聞いているので、窓際に追いやられた定年前のサラリーマンの気分だ。
私はもっと現場で色んな経験もしたいし、年齢もまだ20代台なのに。
でもスタイルも普通だし、お飾りに使うにはショボいと思う。
何でこんな私が選ばれるんだろう……?
愕然とする私に「今までは『お飾りさん』かもしれないけど、社長が激怒して…こんな使えない人間をよこすなってモメたらしいの」
部長はアイスコーヒーを飲みながら煙草に火をつけた。
「仕事に意欲的で、出来る人間を連れてこい。スケジュール管理だけなら、お前がやれって言われたらしい」
確かに新規ブランド立ち上げの話もあるし、バタバタしてるのは知っている。
でも、なぜ私なのか全く見当がつかない。
「さっきの人、桜ちゃんの事を倉庫で見た事があるらしくて…あんなに大切に商品を扱ってて、笑顔で仕事をしている人を社長に見せたいし、そういう人に是非任せたいって」
――褒められていても、全然嬉しくなかった。
「私も断ってみたんだけどね。桜ちゃん今の仕事やりたいのは分かってるし……」
部長が困っているのも分かる。
いつも私達の味方をしてくれるし、間違った事はハッキリいうタイプの人なので、断ってくれた予想もつく。
だけどこの部署で仕事がしたい気持ちが強いので、突き放された気分だった。
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