第1章

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「あんた、冊子作ってた子でしょ?いつも見てて、分かりやすいし商品への愛着も伝わってきてた」 「有難う御座います」 「まだ、あいつ来ないし一緒に飲めば?高橋も」 もう一度、私達の分も準備して椅子に腰をかける。 「今日は生地の工場に行くから、色々勉強になると思う」 意外にフランクに話しかけてくれるのが逆に怖く、いつ機嫌を損ねてしまわないかドキドキしていた。 コーヒーを飲みながら、この人物を観察してみる。 目はキリッとして、少しきつそうな雰囲気……イケ面だがどちらかというと近づきにくい。 不要な事を話すと怒られそうなイメージ。 今まで、女性と仕事をする事が多かったので『やりにくそうだな…』というのが正直なところだ。 社長ともなれば、きっとワンマンでワガママ。 と考えると……胃が痛くなりそうだ。 笑顔を自然に出すのは慣れている。 店頭に立つ時はそうしていたからクセづいてはいるが、お偉い様との仕事なんて、何日もつのか分からない。 高橋さんですら顔色を伺っている人物と、これから毎日顔を合わせなくてはいけないなんて……と不安が膨れていた。 「おはよ、新しい子来たんだ」と第2の緊張が襲ってくる。 「お、おはようございます!今日からお世話になる…」 「今までの子と全然タイプ違うね。モデルみたいでテンション上がってたのに……」 ――グサッと突き刺さる一言が飛んできた。 顔は優しいイケ面だが、この人も頼れなさそう。 私はどちらかというと、ホンワカ顔だし、痩せてはいるが、モデルさんみたいにスラっとした背丈もない。 オシャレは大好きだけど、この人の期待はきっとフェロモンを感じるような女性を指しているのだろう……。 どーでもいい事だが、この態度に少しイラッとはしている。 そんな子がいいなら、なぜ私?とこっちが聞きたいくらいだった。
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