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彼は部屋に充満していたビーフシチューの匂いに、すぐに気がついた。
「何か作って、食べていたんですか」
「はい。ビーフシチューです。……慶一さんは、もう夕飯は食べましたか?」
「ええ。会食があったので」
「そうですか。その、足りました? お話しながらだと、なかなか食べられなかったとかは?」
「いえ、そんなことはありませんでした」
一口食べてくれるかと思ったが、彼からは言い出さなかったため、私から促す勇気も出なかった。
しかし、ここで引き下がっては、永遠に私の手料理を食べてもらうタイミングが分からなくなってしまう。さっそくこの機会に朝食のことを打診することにした。
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