同居

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あまりのショックに泣きわめいてしまおうかとも思ったが、その前に慶一さんが、少し柔らかく「おかしくはないのですが、」と続けた。 「作っていただけるなら、嬉しいです。ご迷惑になるかと心配ですが、大丈夫ですか?」 先程とは打ってかわって、途端に天にも昇る気持ちになった。 私が朝食を作ることは、彼にとっての結論としては「嬉しい」ということなのだ。 そこが分かりさえすれば、私は満足であった。 「大丈夫です、作ります! 迷惑なんて、とんでもないです。作らせて下さい」 こちらの気合いに目を丸くして驚いているようだったが、慶一さんはすぐに爽やかな笑顔を作って、「では明日からよろしくお願いします」とお辞儀をした。 こういう、彼がたまにうっすらと作る表情の変化は、静かな芸術作品を見ているようだった。
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