同居

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──看護師時代、院内で使っていた、複雑で大きな医療機器には、だいたい「DOSHIMA」の青いロゴがついていた。 余計なものは書いていない、シンプルな文字だった。 そのロゴには水のような清涼感があって、それは慶一さんの持つ雰囲気に似ていた気がする。 そのころの私は、株式会社DOSHIMAについて正確なことは知らないし、当たり前だが、知ろうとするきっかけも特にはなかった。 しかし、自分の中で院内を国内に置き換えていたので、その中では医療機器におけるシェアは常にトップであると感じていた。 そのせいか、慶一さんを初めて見たとき、なぜかどこかで会ったようなことがある気さえした。 慶一さんだけではない。社長さんも、その秘書の北山さんもだ。 どこかで会ったことがある気がしたのだ。 しかし、あんなに顔の整った親子は一度見たらそうそう忘れないはずなのだが、どこで会ったのかはついに今まで思い出せていない。 そもそも会ったことがあるのか、いつも視界に入ってきたロゴのせいで錯覚しているのか、それすらも分からなかった。
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