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配属された総務部は、当たり前だが女性ばかりであった。
デスクがいくつかの島を作っていて、私も五つのデスクが向かい合いくっついた、とあるひとつの島に加えられた。
そこは大変分かりやすいメンバー構成であり、その島の四人を覚えることに苦労はしなかった。
五十代くらいの磯田さんと、四十代くらいの森さん、三十代くらいの前原さん、そして同い年くらいの市川さんだった。
「宮田さんって専務の婚約者なんでしょ? 偉いじゃないの勤めに出ようってんだから。あたしは旦那の稼ぎが良けりゃすぐ辞めちゃうよ。それで、どうやってあの専務を落としたんだい? 可愛い顔してるけど、仕事仕事って人だろ、あの人」
向かいに座っている磯田さんは、相手について知りたいことを何でも聞くタイプの人だった。
「いやあの、落としたとか、そういうのじゃありません。身内同士で、ご縁があって。とても私なんか釣り合ってないのですが」
「ああ、そんなこと言って。気をつけなよ。弱気になってると、専務なんてモテモテなんだから、すぐメス猫に獲られちゃうよ。市川ちゃんとかね」
磯田さんは、私の隣にいる市川さんに目線をやった。
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