同居

23/45
前へ
/262ページ
次へ
配属された総務部は、当たり前だが女性ばかりであった。 デスクがいくつかの島を作っていて、私も五つのデスクが向かい合いくっついた、とあるひとつの島に加えられた。 そこは大変分かりやすいメンバー構成であり、その島の四人を覚えることに苦労はしなかった。 五十代くらいの磯田さんと、四十代くらいの森さん、三十代くらいの前原さん、そして同い年くらいの市川さんだった。 「宮田さんって専務の婚約者なんでしょ? 偉いじゃないの勤めに出ようってんだから。あたしは旦那の稼ぎが良けりゃすぐ辞めちゃうよ。それで、どうやってあの専務を落としたんだい? 可愛い顔してるけど、仕事仕事って人だろ、あの人」 向かいに座っている磯田さんは、相手について知りたいことを何でも聞くタイプの人だった。 「いやあの、落としたとか、そういうのじゃありません。身内同士で、ご縁があって。とても私なんか釣り合ってないのですが」 「ああ、そんなこと言って。気をつけなよ。弱気になってると、専務なんてモテモテなんだから、すぐメス猫に獲られちゃうよ。市川ちゃんとかね」 磯田さんは、私の隣にいる市川さんに目線をやった。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2163人が本棚に入れています
本棚に追加