同居

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何のストレスもないまま昼休みの時間となり、私は市川さんと食堂で社食を食べた。 市川さんは食券を買うとき、塩ラーメンが美味しいだとか、酢豚定食にはパイナップルが入ってるだとか、メニューについてたくさん説明してくれた。 市川さんは、食堂の若いお兄さんとも親しげに話していた。お兄さんは少し、他の人と話すより嬉しそうに思えた。 「でも本当に羨ましいです、宮田さん。家に帰ったら専務がいるなんて」 市川さんは言うことも正直であった。 「まだ、最近なので、全然分からないんですけどね。専務がどういう人なのか」 「やだ宮田さん、専務って呼んでるんですか?」 「え? あ、はい……」 本当は、朝の車の中で、慶一さんから会社では「専務」と呼ぶように言われたからそうしているだけであったが、そこを説明することはないと思った。 また、私は慶一さんがこの会社の専務であると、そのときの車内での会話で初めて知ったのだった。 磯田さんとは違うのは、市川さんはそこまで根掘り葉掘り聞き出そうとはしないことだ。 というよりも、興味がないように思えた。
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