同居

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ユリカの要約は、つまり私の言いたいことと間違いはなかったが、少しだけ要点は違うところにあると感じた。 それを自分でも上手く言い表せないが、言い表さなければただの自慢話になってしまうので、寝起きの頭をフルに使って、言葉を並べた。 「そういうことだけど、でもね、それって恐いと思うんだよ。恐いというか、不安なの。慶一さんには慶一さんの生活の仕方があって、それは毎日狂わないほど意味があることなんでしょ。それがなんで、出会って何日も経たない私なんかのために変えられるの。おかしいでしょ」 『菜々子に好かれたいんじゃない? 親の決めたこととはいえ、結婚するんだし』 「もう多分好きだよ私は。顔見たときから」 『じゃあいいじゃん』 「良くないよ。不安だよ。これじゃ対等になれてる気がしないのよ。親の決めた結婚、って域をいつまでも出ないんじゃないかって。」 ユリカに反論する形でそう言ったところで、これが自分の抱えていた、モヤモヤとした不安の正体であることにやっと気がついた。
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