0人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
■「私が漫画をやめる時③」■
会社に行きながら暇つぶしに描いた漫画が、
けっこう大きな賞をゲットした。
何か歩調の合わない毎日に別れを告げ、
彼女は漫画道へと足を踏み入れた。
だけど……受賞作が掲載されて以降、
ネームが通らない……絵柄も直そうと言われた。
自分は直す必要が無いと言っても、
のれんに腕押し状態。
彼女は我を通した。
自分は受賞した作品の絵だしスタイルだと……。
担当編集は笑顔を絶やさず彼女にこう告げた。
「それは一つの通過点でしかないんです。
受賞時の読み切り掲載は顔見世みたいなもんです。
そこから読者の反応を拾ってプラスにしないといけない。
極まれに描いたまんまが評価される人もいますが、
長く描いてるプロでもそんなにスンナリは行きませんし、
作品スタイルや絵柄を研究し続けている人が殆どです。
自分のスタイルと求められている部分の共存が、
アナタにとって次のステップですよ。
そして指摘した部分を克服して他を伸ばせれば、
かなりの武器になると思います!」と。
はぁ……。
気の抜けた返事しか出てこなかった。
なんそれ?
熱血? 努力?
いやいやいや……そうなの?
それ最初に言ってくれないかな……。
会社辞めちゃったし……。
募集要項のとこに書いておいてくんないと……。
彼女は自分でもシッカリと
自覚している程の……根性無しだった。
根っからの甘えただった。
会社は父親のコネ入社だった……。
っつーか直すのネーム?
今まで構成とか考えて描いてなかったから、
起承転結が分からないんだけど……。
彼女は本当に漫画初心者だった……。
真面目に漫画描いてる人からしたら、
ふざけんな! という言葉しか出ないような人だった……。
担当が良い人なのは初めて会った時に分かった。
ちゃんと私の漫画見てるなーと感じた。
会社にいるようないい加減な大人じゃないと感じた。
だからそんな担当の言う修正案が大事なのは……、
なんとなくは分かっているつもり……。
だけど、言われたように直すのはたやすい事じゃない。
彼女は徐々に担当と連絡を取らなくなった……。
最初のコメントを投稿しよう!