■「私が漫画をやめる時③」■

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■「私が漫画をやめる時③」■

会社に行きながら暇つぶしに描いた漫画が、 けっこう大きな賞をゲットした。 何か歩調の合わない毎日に別れを告げ、 彼女は漫画道へと足を踏み入れた。 だけど……受賞作が掲載されて以降、 ネームが通らない……絵柄も直そうと言われた。 自分は直す必要が無いと言っても、 のれんに腕押し状態。 彼女は我を通した。 自分は受賞した作品の絵だしスタイルだと……。 担当編集は笑顔を絶やさず彼女にこう告げた。 「それは一つの通過点でしかないんです。 受賞時の読み切り掲載は顔見世みたいなもんです。 そこから読者の反応を拾ってプラスにしないといけない。 極まれに描いたまんまが評価される人もいますが、 長く描いてるプロでもそんなにスンナリは行きませんし、 作品スタイルや絵柄を研究し続けている人が殆どです。 自分のスタイルと求められている部分の共存が、 アナタにとって次のステップですよ。 そして指摘した部分を克服して他を伸ばせれば、 かなりの武器になると思います!」と。 はぁ……。 気の抜けた返事しか出てこなかった。 なんそれ? 熱血? 努力? いやいやいや……そうなの? それ最初に言ってくれないかな……。 会社辞めちゃったし……。 募集要項のとこに書いておいてくんないと……。 彼女は自分でもシッカリと 自覚している程の……根性無しだった。 根っからの甘えただった。 会社は父親のコネ入社だった……。 っつーか直すのネーム? 今まで構成とか考えて描いてなかったから、 起承転結が分からないんだけど……。 彼女は本当に漫画初心者だった……。 真面目に漫画描いてる人からしたら、 ふざけんな! という言葉しか出ないような人だった……。 担当が良い人なのは初めて会った時に分かった。 ちゃんと私の漫画見てるなーと感じた。 会社にいるようないい加減な大人じゃないと感じた。 だからそんな担当の言う修正案が大事なのは……、 なんとなくは分かっているつもり……。 だけど、言われたように直すのはたやすい事じゃない。 彼女は徐々に担当と連絡を取らなくなった……。
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